歯科から医科へ
2013.1月号
歯科業界における最近のキーワードの一つが「医科歯科連携」です。日本の超高齢化社会において、基礎疾患が全くない方は少なくなると考えられます。歯牙の疾患のみにとらわれていると、患者さんのちょっとした一言も見逃すことがあるかもしれません。昨年下半期に当科受診~医科併診となったお二人のエピソードをご紹介いたします。
●70代の男性 1年前より摂食嚥下のトレーニングで歯科に通院されていましたが、ある時「食事が遅くなってきた」とのコメントがありました。何気ない一言ですが担当医(昭和大口腔リハ科出身齋藤真由先生)は見逃さず口腔機能の評価を行い、早急の医科主治医診察を依頼しました。他施設ですが脳外科~神経内科受診によりALS(筋萎縮性側索硬化症)の診断となりました。ALSでは舌、のどの筋肉の力が弱まるため、初発症状として話しにくくなったり、食べ物を飲み込みにくくなる口腔内の症状がみられることが知られています。
●80代男性 かかりつけ歯科より歯肉の腫瘤精査のご紹介でした。1年目研修医(昭和大卒二宮先生)に問診をお願いしたところ、歯の症状以外に「2,3日前から左手に力が入らなくなった」との情報がありました。新卒歯科医にも何か感じるところがあったのでしょう、即日整形外科~神経内科~脳外科と受診していただき、MRI精査により脳腫瘍の所見が認められました。歯科としては、たまたま窓口になっただけですが多忙にもかかわらず予約外当日の診察を受けて頂いた各科の先生、いつも快く至急撮影を許可して頂ける放射線科のスタッフ、院内の連携がこの上なく心強く感じました。
自分の領域以外のことを他の分野の専門家からアドバイスを受けることは自然なことです。荏原病院は地域支援病院としての役割がありますので地域医療のニーズも十分受け入れています、些細なことでもどうぞご紹介ください。もちろん歯科口腔外科を連絡係としてお気軽にご利用していただいて結構ですので、どうぞ今年もよろしくお願いいたします。