雑用のすゝめ
2013.3月号
私は卒後すぐから10年間大学の医局に在籍しました。卒後1年目といえば、まさに雑用の嵐。診療以外の雑用はおもしろくなかったものでした。
例えば、患者さんの問い合わせや情報提供などの手紙、開業医の先生への問い合わせの電話、他科依頼の伝票など、教授診察の係になった時は一日手紙を書き、電話をしているようなものでした。また、それぞれの季節になれば忘年会や歓送迎会などの宴会セッティング(会場の決定や進行など)、ご招待する先生への葉書の印刷・・・その他、スライド整理、学会での宿泊の手配などなど挙げればきりがありません。
しかし月日が経ってみると、これらの雑用をこなしてこなければ知らなかった事がたくさんあり、卒後すぐの雑用は雑用でないということに気付かされました。情報提供などの手紙は、相手に伝えなければならない、あるいは知りたい項目がだいたい決まっているため、何十枚も書いているうちにひな形がわかってきます。他科への依頼も、どう交渉したら、どの時間ならうまく予約がとれるかなどがわかってきます。宴会のセッティングも、すでに医局にはいない先生方と話をするチャンスとなり、その事でバイト先を紹介していただいたり、自分に興味のある分野の先生を紹介してくれたりすることもありました。
医療技術については、教科書を読む、見学に行く、講習会に行くなど沢山学ぶ場がありますが「医療業界独特の礼儀作法」を学ぶ場はどこにもありません。
いくら技術を持っていても、他の先生や患者さんと、この礼儀作法を踏まえたコミュニケーションがとれなければ、良い診療はできません。ですから、研修医を抱える先生方は、ぜひ雑用をやるきっかけをつくり、学ぶ場を提供していただけたらとおもいます。また、研修医の先生も率先して雑用を行うことをおすすめします。きっと役に立つ時がきます。