8020その後
2013.7月号
歯科界からのPRとして1990年にはじめて世に現れた8020(ハチマルニイマル)はいまや多くの国民に周知されている用語の一つです。
自分の歯が20本以上保たれていれば、ほとんどの食品を食べることに支障がないとの調査結果などを踏まえ、目標では2010年までに80歳で自分の歯を20本以上持っている方の割合を20%以上にすることでしたが、2005年の時点ですでに24%に達し、2011年では35%を越えています。
学校検診でも虫歯を見ることが本当に少なくなったという声を多く聞きます。早期の歯科受診行動や歯磨き習慣をはじめとする歯科保健活動が次第に向上した結果と思われます。疾病構造が変化し、感染症(虫歯)の時代から慢性疾患・生活習慣病が大きな位置を占めるようになり、生命をもって日々どう生きるか、日々の営みを支えていくことが歯科医療でも仕事の一つとなってきています。自分の歯を保つことは食べる能力を維持するだけでなく様々な面から全身の健康維持増進に関与していることがわかってきています。8020達成者は自分で車を運転する人が圧倒的に多く、歯の少ない人よりも携帯電話を持っているそうです。(スマフォかどうかはわかりませんが・・)
自立して社会に参加している、積極的に外に出ていく生活をしているとも言えるのではないでしょうか。
しかし反面、歯が多数残っているために、リスクを抱えている高齢者の方がいらっしゃることも事実です。口腔内細菌は歯牙に付着しますので、歯がたくさん残っているとメインテナンスにも大変な労力を必要とします。セルフケアが難しくなった口腔は細菌の培養庫となり、全身へ悪影響を及ぼします。そして、歯は存在するだけでは咬めません。(入れ歯も同じことです)
歯の意味を理解できないと、粘膜や舌を傷つける凶器にもなり得ます。歯が残っていることによるこれらの悩ましい問題は、往診を行っている先生方が日々感じていらっしゃることと思います。QOLを維持するためには歯の数が多いことがアドバンテージになりますが、歯の数とQOLは比例するものではありません。
日本歯科医師会会長の言葉を最後にご紹介します
「8020は20本の歯を残すことが目的ではない、(中略)これはあくまでも手段であり、目的は20本の歯を残した人が最後まで生きがいのある人生を送れるということが目的である」