院内の連携
2013.11月号
私が大学を卒業した20年ほど前、患者さんとお会いした当日に治療を開始できないことはありませんでした。患者さんは何かしらの悩みで困窮して来院されたわけですし、こちらも早くそれを軽減してあげなければ、という思いもありました。その当時補綴科という義歯や差し歯を作製する講座に所属していましたので若い患者さんは少なかったはずですが、それでも歯科治療に支障のある合併症をお持ちの方はほとんど覚えていません。歯科の大学病院には通院に不自由のない比較的健康な方が多かったのかもしれませんが、あるいは今思えば問診も大雑把であったような気がします。
そして現在、総合病院の一つの診療科としての歯科で仕事をしていますと、全身疾患をお持ちでない患者さんが珍しいぐらいです。もちろん20年前とは人口構成も変化し、高齢化が進んでいますので必然かもしれませんが、治療前にじっくり過去の医科的エピソードをお伺いすることが当たり前になっています。たくさんの常用薬がありますと服薬のチェックも一苦労ですし、ご本人のお話が的を得ていないと、ご家族にもご協力いただかないとなりません。ようやくお口の中を拝見すると「あら?!歯は無かったんですね」とやや拍子抜けすることもありますが、抜歯などの観血処置を予定する場合は「治療の前に主治医の先生にお体の調子を伺いましょう」と照会状を書くことが多くなりました。そしてコンディションを把握はしたものの、リスクが高い場合には歯科スタッフのみではカバーできませんので他科の先生やコメディカルの力を借りなければなりません。荏原病院の医局は大きなフロアに机がランダムに配置されており科ごとに集まっていないため、お隣同士は異なる専門の先生が並んでいます。そのため他科の先生方とのコミュニケーションがとりやすく、大学病院や他の総合病院にはない風通しのよい医局になっています。今のような環境だからこそ、自分にも地域先生方からご紹介いただいた大切な患者さんのお手伝いができていると、いつも心強く思っています。
*11/26(金)に恒例の7歯科医師会合同懇親会を開催いたします、是非皆さまご参加ください。