いろいろな日本語 -オノマトペ-


2019.9月号
歯科口腔外科 医長 齋藤浩人(さいとう ひろと)


 夏はやっぱりビール!キンキンに冷えたビールをごくごく飲む時は格別!
 この文の中の「キンキン」「ゴクゴク」が、擬態語、擬音語(オノマトペ)です。
早川文代著「食べる日本語」(毎日新聞社)によると、「ごくごく」は勢いよく飲み物を飲む様子の表現だそうです。他に「がぶがぶ水を飲む」という表現もありますが、この「がぶがぶ」は口蓋に水が当たる音を表現したもので、「ごくごく」はのどが鳴る音を表しているとか。日本はとくにこのオノマトペが豊富で、欧米語や中国語の3~5倍も存在し、日本語を特徴づけています。
 では、我々医療従事者でのオノマトペは?痛みの表現で多く使われています。主観的な痛みを他者に伝えることは難しいものです。「ズキズキ」「しくしく」「ガーン」「ちくちく」と挙げればキリがありません。坂本真樹著「五感を探るオノマトペ」には、「ズキズキ」と「がんがん」は英語でthrobbing pain と表現されるが、日本人にとっては質の異なる痛みであるとしています。この痛みの表現は、問診の中で病態を診断できる手かがりとなることが多いので、このような日本語の繊細な違いを定量化、評価尺度表示を多言語化し、国内外で医師の問診に役立てる方法も研究・開発されているようです。近い未来、オノマトペが共通単語になることより、日本人でなくても痛みを訴える際の不安が解消されるかもしれませんね。

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